限られたリードから最大の収益を引き出す「リードナーチャリング」

オンライン広告技術の進化に伴って、リスティング広告やSNS広告を駆使した顧客獲得が主流になってきました。しかし、多くのマーケティング担当者が「CPAにこだわると、ROIをあげられない」という悩みを抱えているのも事実です。

CPAとは顧客獲得単価のことで、新しく獲得した顧客に1人当たりかかったコストを示す指標です。

このような状況の中で収益を伸ばすために

  • LTVを向上させる
  • 見込み顧客が顧客になる確率を高める

といった打ち手を考えることができます。

この記事では、二番目の見込み顧客が顧客になる確率を高めるための方法・効果について紹介します。

獲得したリードのうち購買段階にあるのはわずか10%

BtoB企業がリードジェネレーション(コンタクト情報の獲得)を行った際に、すでに購買段階であるとされるリードは10%に過ぎません。そのため大量のマーケティング費用を投下したとしても、ほとんどのリードが無駄になってしまっていると感じているマーケティング担当者は少なくないでしょう。

しかし、一見無駄になっているように見えても、65%のリードは継続フォローによって購買意欲を高めることができるという調査があります。このように、見込みの薄かったリードの購買意欲を高めるプロセスを「リードナーチャリング」と言います。

リードナーチャリングを実現するためには

  • 顧客の購買意欲を把握する
  • 購買意欲に合わせたコンテンツを配信する
  • 課題や決裁権を持っているリードに絞って提案する

といったステップがあります。しかし、ひとりひとりの行動データを確認し、個別にメール文章などを作成することは非現実的です。そこで、マーケティングオートメーション(MA)を導入してプロセスを自動化したり、インサイドセールス組織を立ち上げる企業が増えています。

マーケティングオートメーションについてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、ぜひこちらもご覧ください。

マーケティングオートメーション( MA )とは

リードナーチャリングの鍵は「ステージ管理」

リードナーチャリングはマーケティング部門だけの仕事ではありません。リードが顧客になるまで、マーケティング・インサイドセールス・セールスなどの複数部門をまたがって行われる施策です。そのため、それぞれがどのような役割を担っているのか可視化することはとても大切であり、ここを疎かにしている企業は「マーケティングとセールスの仲が良くない」といった課題を抱えてしまいます。

リードステージには以下のようなものがあります。 

  • Marketing Lead(Lead)                 フォーム送信でコンタクト情報を獲得したすべてのリード
  • Marketing Accepted Lead(MAL) マーケティングでリードナーチャリングすべきリード
  • Marketing Qualified Lead(MQL) MALの中でも確度が高く、セールスへ受け渡すべきリード
  • Sales Accepted Lead(SAL)         MQLのうち、本当にセールスが当たるべきリード
  • Sales Qualified Lead(SQL)         セールスが商談すべきと判断したリード
  • Opportunity                                 商談化が進み、クロージングに入ったリード

次に各フェーズの間ではどのようなことが行われているのか、見ていきましょう。

Lead→MAL

フォーム送信してコンタクト情報を獲得したリードのうち、マーケティングでリードナーチャリングすべきリードかどうか判別していきます。競合や協業関係にある企業などの完全にターゲット外のリードを除外していきます。

MAL→MQL

MALにメールマーケティング等を行い、関心度を高めていきます。メールの開封率やWeb上での行動履歴から関心度が高いと判断されたリードがMQLとして営業に引き渡されます。

MQL→SAL

マーケティングから上がってきたリードの全てがセールス対象であるとは限りません。マーケティングではあくまでもオンラインでの行動履歴を見ているので実際の顧客像とは異なるケースがあります。このフェーズでは主にインサイドセールスがMQLに電話を掛け、さらにMQLの関心度を引き上げていきます。結果、セールスが訪問すべきと判断したリード、または、先方から訪問依頼を受けたリードがSALとなります。

SAL→SQL

SALのうち、実際にセールスがアポに行き、会社紹介・サービス紹介・ヒアリングを行ったのち提案すべきと判断されSALがSQLとなり商談が始まります。

SQL→Opportunity

商談のが進んでいき、見積を出すという提案活動に入ったSQLはOpportunityと定義されます。商談の中でもより受注に近い状態です。一般的に数週間から1ヶ月で受注か失注か判明します。

上記のフェーズを理解し数値を追っていくことで、自社の顧客獲得プロセスの中で、どこがボトルネックを把握することができるようになります。また、リードがどのような状態になったら次のフェーズに進むのかは、マーケティングとセールスで合意していく必要があります。SQLが多くてセールスのリソースが足りなくなってきたという場合には、MQLの基準を厳しくするといった臨機応変な対応も必要です。

リードナーチャリングで成約率は2.9倍になる

リードナーチャリングを行うことで各フェーズの数字はどう変化していくのでしょうか。マルケトの調査では以下の3点がリードナーチャリングを行った時に現れる各フェーズでの効果として報告されました。

  • Lead→MAL→MQLの確率が53%上昇
  • MQL→SAL→SQLの確率が50%上昇
  • SQL→Opportunityへの確率が平均で20%上昇

リードナーチャリングによってそれまでは失注していたリードが商談化に至る確率が上昇し、同じリード数でもより多くの商談を生み出せるようになるのです。

では、次に上記のリードナーチャリングの効果が成約率にどれほど影響を与えるのか見て見ます。今回は一般的なSaaS企業の平均的なコンバージョン率を元に計算します。

 

リードナーチャリングを行うことで、各フェーズごとの通過率(コンバージョン率)が上記の様に変化していきます。結果として0.8%であったリードからの成約率は2.3%にまで向上します。その差にして2.9倍もの効果があると試算されます。

リードナーチャリングがMRRに及ぼす影響

ここまでで、リードナーチャリングが成約率を2.9倍まで引き上げてくれることがわかりました。しかし、このままでは具体的に売上イメージがつきにくいので、MRRに換算してみます。

MRR(月次経常収益)とは、企業の営業活動によって毎期に経常的・反復的に生じる収益のことです。特にSaaSなどサブスクリプションモデルのビジネスで用いられる指標です。予測がつきやすく、一定の積み重ねが期待できることから、金融市場で評価されやすい指標です。

まずはじめに、SaaSなどのサブスクリプションモデルのビジネスに必須なMRRを求める公式を確認しましょう。

MRR=前期MRR+新規MRR(獲得リード数×成約率×サービス単価)−レベニューチャーン(前期MRR×月次解約率)

本来であれば、ここにアップセルやクロスセル、ダウンセルによる収益増減も加味すべきなのですが、計算が煩雑になってしまうので今回は一定であると仮定して計算していきます。

また、MRRを計算するにあたり、今回は

  • 1顧客の平均単価が10万円
  • 月200リード獲得
  • 月次チャーンレート0.69%(Pacific crest surveyによるSaaS企業300社の平均解約率)
  • 前月のMRRが500万円

のSaaS企業を仮定して計算していきます。

リードナーチャリングを行っていない場合

MRR=500万(前期MRR)+ 200(リード数)× 10万(サービス単価)× 0.8%(成約率)- 500万(前期MRR)× 0.69%(月次解約率)

= 500万 + 16万 – 3.5万

= 512.5万

よって、リードナーチャリングを行っていない時のMRRは512.5万円と求められます。

リードナーチャリングを行っている場合

MRR=500万(前期MRR)+ 200(リード数)× 10万(サービス単価)× 2.3%(成約率)- 500万(前期MRR)× 0.69%(月次解約率)

= 500万 + 46万 – 3.5万 

= 542.5万

リードナーチャリングをすることによって512.5万円だったMRRは542.5万円まで上昇すると見込まれます。

リードナーチャリングを行わないことによる機会損失

MRRの差は単月にして30万円でしたが、MRRは複利的に積み上がっていくので時間が経過するにつれてその差は開いていきます。


当初は月30万円だったMRRの差は、2年後には666万円まで開いています。また、リードナーチャリングを行うことで回収できた機会損失の積み重なりは8541万円にもにもなります。

Magic Momentでは売上改善がいくら見込めるか(発生している機会損失はいくらか)をシミュレートする「機会損失シミュレーター」を作成しました。この機会に、上記の計算を自社に当てはめて計算してみてはいかがでしょうか。また、すでにマーケティングオートメーションやインサイドセールを導入してリードナーチャリングを行っている企業でも、ベストプラクティスのデータからどれだけ伸び代があるのか計測できる仕様となっています。ぜひ試し下さい。

まとめ

限られたリードから売り上げを最大化するためにはリードナーチャリングが重要であり、

  • Lead→MQLの確率が53%上昇
  • MQL→SQLの確率が50%上昇
  • SQL→Opportunityへの確率が平均で20%上昇
  • MRRの向上による機会損失の回収

といった効果を生み出すことができることがわかりました。実際には過去のリードが蓄積されていることに加えて、リード獲得数も毎月増加していくことから、リードナーチャリングによる売り上げ改善はさらに見込めるでしょう。

先述のように、リードナーチャリングは、マーケティングだけの仕事ではなく、営業とマーケティングが協力して行う必要があります。しかし、他部署と協力する前に、営業の部署の仕事が可視化され、適切な定義や議論に基づいた KPI が設計できていないと、目標の未達が起きた場合、お互いの責任にしあって、余計な対立を招きかねません。そこで、Magic Moment では、自分の組織がどの程度、生産性の高い営業組織の条件を満たせているのかを無料で診断できる「BtoB 営業組織 レベルチェックシート」を無料で配布しています。ぜひご活用ください。

また、このような取り組みを行うためには、マーケティングオートメーションが不可欠です。国内・海外で様々なマーケティングオートメーションも増えており、どれが最適なのか悩むマーケターも少なくありません。

そこで、私たちは有名な7つのマーケティングオートメーションの強み・弱み・最適な企業を評価しました。ぜひ「【2019年版】BtoB向けマーケティングオートメーション(MA)を徹底比較」もご覧ください。

【2019年版】BtoB向けマーケティングオートメーション(MA)を徹底比較