顧客エンゲージメント強化を実現するツール5選を徹底比較
サブスクリプションビジネスの成長を左右する「解約率(チャーンレート)」。しかし、どうすれば解約率を減らすことができるのかがわからない方も少なくないのではないでしょうか。
そんな解約率を減らし、売上の最大化を実現するために、サブスクリプションビジネスを展開する企業が重視したい考え方が「顧客エンゲージメント」です。
この記事では、そもそも顧客エンゲージメントとは何かの説明に加えて、顧客エンゲージメント強化のために必要なツールやその特徴、そしてよくある取り組み失敗例についてご紹介します。
目次
顧客エンゲージメント強化の必要性
顧客エンゲージメントとは、顧客と企業の「深い関係性」「友好的なつながり」「親密さ」を表す言葉です。ロイヤリティと似た意味を持っていますが、ロイヤルティではアンケートによって顧客の愛着(NPS)を測定する手法をとっていることに対して、顧客エンゲージメントでは顧客の行動に基づいてその度合いを測定する違いがあります。
近年、顧客エンゲージメントが重視された背景は「サブスクリプションビジネス」の台頭にあります。商品を一度購入すれば使い続けることができる売り切り型ビジネスとは異なり、サブスクリプションビジネスでは、顧客はサービスの利用期間に応じて料金を支払います。つまり、顧客は商品を所有するのではなく、必要に応じてサービスを利用できます。
企業にとってもメリットがあります。売り切り型ビジネスでは、ある年に売上が立っていたとしても、それが翌年も発生するかどうかはわからず、ゼロからマーケティング・セールスに投資する必要があります。一方、サブスクリプションビジネスはストック型ビジネスです。一定の解約(チャーン)はありながらも、売上は毎月・毎年と繰り返されるため、収益予測しやすいという特徴があります。
そのため顧客の解約(チャーン)を抑えながら、アップセル・クロスセル等を行うことが、サブスクリプションビジネスの売上を最大化するための鍵となります。
顧客は解約(チャーン)する理由とは?
では、顧客はなぜサービスを解約するのでしょうか?
ProfitWell の調査によると、
- そもそも課題を解決できないサービスだった
- 望んだ成果を得ることができなかった
- サービスの使い方に慣れなかった
- より魅力的な競合サービスが現れた
- バグが直らない(と顧客が思っている)
- 課題解決の優先順位が下がった
- サービスの価格が高すぎる
- クレジットカードの有効期限が切れた
といった原因があることが明らかになりました。
もし企業がこれらの予兆を正しく察知して、顧客のニーズに応じて素早くフォローすることができればどうでしょうか?
顧客の課題を解決できるだけでなく、信頼関係(顧客エンゲージメント)も深めることができるでしょう。その結果、顧客のサービス解約が減るだけでなく、より良いサービスを求めて上位プランへのアップセル・クロスセルが増加します。Salesforce によると、より良い顧客体験のためであれば、55%の顧客はより多くのコストを支払います。
このような背景で、サブスクリプションビジネスでは「顧客エンゲージメント」が重要視されるようになりました。
顧客エンゲージメントを強化する方法
顧客エンゲージメントを強化するためには3つのプロセスがあります。
- データの収集・統合
- データの可視化・分析
- 施策の落とし込み・自動化
最初のプロセスでは、顧客の行動・感情・好みを把握するために、さまざまなデータを収集することが大切です。また、それぞれ別々のデータベースに保存するのではなく、ひとつのデータベースに統合することで、思わぬ因果関係や相関関係に気が付くかもしれません。
次に、データの可視化・分析です。手間をかけてデータを蓄積したとしても、データを可視化することができなければ価値がありません。ダッシュボードやBIでデータを見ることができるようにしましょう。
最後のプロセスは、施策への落とし込み・自動化です。データで顧客の行動やニーズを把握することができたら、どのようにフォローすることができれば顧客エンゲージメントを深めることができるのか、具体的な施策に落とし込むことが大切です。また、近年は顧客の行動をトリガーに、アプローチを自動化するツールも出てきているため、積極的に活用することも重要です。
顧客エンゲージメントを強化するツール5選を比較
では、具体的に顧客エンゲージメントを強化するためにはどのようなツールが人気なのでしょうか。まだ日本では認知の少ない概念ですので、海外で導入されているツールをご紹介します。
Outreach(アウトリーチ)
Outreach(アウトリーチ)は、営業部門・カスタマーサクセス部門による顧客エンゲージメント強化を支援する米国発ツールです。SFA / CRM / MA と連携することで、見込み顧客の育成に役立つアクションなどを把握することができます。また、プレイブック作成機能やレポート機能があります。
特徴
- セールスメールの分析機能(開封率のレポート / ABテストの自動化 など)
- セールスシーケンス機能を用いたプレイブック作成
- Outreach Galaxy による他ツールとのデータ連携機能
価格
- 1ユーザーあたり120ドル/月
導入企業
- DocuSign
- Zoom
- Showpad など
こんな方にオススメ
- セールス部門のマネージャーおよびRep
- カスタマーサクセス部門のマネージャーおよびRep
SalesLoft(セールスロフト)
SalesLoft(セールスロフト)も、Outreach 同様に営業部門・カスタマーサクセス部門による顧客エンゲージメント強化を支援する米国発ツールです。SalesLoft を利用することで、見込み顧客の優先順位付けやメール・架電をひとつのツールで行うことができます。
特徴
- ターゲットの属性や行動に基づいたワークフロー作成機能
- ベストプラクティス共有のためのプレイブック作成機能
- 営業パイプライン管理機能
価格
- 1ユーザーあたり100ドル/月
導入企業
- Stripe
- IBM
- CISCO など
こんな方にオススメ
- セールス部門のマネージャーおよびRep
- カスタマーサクセス部門のマネージャーおよびRep
Customer.io(カスタマードットアイオー)
Customer.io(カスタマードットアイオー)は、メール・プッシュ通知・SMSによるアプローチに特化した顧客エンゲージメント強化ツールです。直感的な UI でワークフローを作成でき、顧客の行動に応じたメッセージ配信などが可能です。
特徴
- Web/モバイル上の行動に応じたメールキャンペーンの配信
- Google 広告や Facebook 広告との連携機能
- ドラッグアンドドロップによるメールデザイン機能
価格
- ベーシックプラン:150ドル/月
- プレミアムプラン:995ドル/月
導入企業
- Segment
- IFTTT
- reddit など
こんな方にオススメ
- マーケティング部門のマネージャーおよびRep
- カスタマーサクセス部門のマネージャーおよびRep
ChurnZero(チャーンゼロ)
ChurnZero(チャーンゼロ)は、ソフトウェア向けに開発された顧客エンゲージメント強化ツールです。ソフトウェア上でのユーザー行動データなどを収集して、リアルタイムにアラートを出すこと等ができます。
特徴
- Salesforce や Zendesk との連携機能
- ユーザーの行動トラッキング機能
- 顧客満足度を測定するNPSアンケート機能
価格
- 非公開
導入企業
- iContact
- brazen
- CISION
こんな方にオススメ
- カスタマーサクセス部門のマネージャーおよびRep
Mixpanel(ミックスパネル)
Mixpanel(ミックスパネル)も、ソフトウェア向けに開発された顧客エンゲージメント強化ツールです。ユーザーひとりひとりのデータを収集・可視化できる他、コホート分析などを行うことができます。
特徴
- ユーザー単位のプロダクト利用状況分析
- コホート分析機能
- ユーザー行動に応じたメール/プッシュ通知
価格
- スタータープラン:無料
- グロースプラン:89ドル/月〜
- エンタープライズプラン:要見積もり
導入企業
- UBER
- Expedia など
こんな方にオススメ
- カスタマーサクセス部門のマネージャーおよびRep
顧客エンゲージメント強化の失敗例と解決策
ここまで、ツールを活用することで顧客エンゲージメントを効率的に強化できることをご紹介しました。しかし、ツールをうまく活用することができず、成果に結びつかないケースもあります。
なぜそのようなことが起きてしまうのでしょうか? よくある失敗例とその対処策についてご紹介します。
担当者がデータを入力しない
顧客エンゲージメントを強化する鍵は、顧客を深く理解し、ニーズに応じたフォローを実現することです。しかし、顧客に関するデータが不正確だったり、そもそも入力・取得されていない場合、正しく顧客理解することは困難です。
よくあるケースは、営業担当者が SFA (営業支援システム)に商談データなどを正しく入力していないことです。顧客と直接コミュニケーションできる営業担当者は、データ収集という観点で重要な役割を担っています。一方、担当者にとってデータ入力は大きな負担となっており、HubSpot によると27%の営業担当者は1日1時間データ入力に時間を費やしているといいます。
そのため、マネージャーは担当者がデータ入力する負担を減らせる仕組みを作ることが大切です。例えば入力するデータ項目を重要なものだけに絞ることが挙げられます。また近年海外では、商談の音声データを自動でテキスト化するツールなども登場しています。このようなツールを活用して、担当者のデータ入力に関する負担を減らていきましょう。
マネージャーのためのツールになっている
担当者がデータ入力に多くの時間をかけても、それに見合ったインサイトを見つけることができていないケースです。それどころか、マーケティング部門やメール配信などを行っているか、営業部門は架電・提案を行っているか、カスタマーサクセス部門は問い合わせ対応をしているかなど、顧客のためではなく業務管理のためにデータを使ってしまっていることがあります。
このようなデータの使い方も間違いではありませんが、顧客データを分析して、各担当者がより成果を出すためにはどうしたらいいのかを見つけることができてこそ、そのデータ入力やツール学習の ROI が最大化されます。
他部門のツールとデータ連携されていない
マーケティング部門はMA、営業部門はSFA/CRM、カスタマーサクセス部門はプロダクト分析ツールと、部門ごとに利用するツールが異なる組織がほとんどです。このような組織では、顧客に関する貴重なデータも分断されてしまっていることでしょう。
例えば、セールス担当者が商談で顧客にヒアリングした内容を、カスタマーサクセス担当者が再びヒアリングするのは優れた顧客体験とは言えないでしょう。もし各ツールのデータが連携されていれば、このような課題は解決されます。
他にもメリットがあります。解約する顧客と解約しない顧客について分析する際、各ツールがデータ連携されていれば、
- 顧客はウェブサイトで特定機能の紹介ページを閲覧している
- 顧客は商談で特定機能のデモを案内されている
といった共通項があることに気づくかもしれません。上記のようなインサイトが見つかれば、マーケティングEメールで機能紹介ページを紹介したり、商談スクリプトを変更するなどのアイデアが浮かびます。
顧客エンゲージメントに関する真の課題や解決策は、実は自分が担当している部門の外側にあるかもしれません。それに気づくためにも、データ連携はとても大事です。
まとめ
顧客エンゲージメントの必要性やオススメのツール、そしてツールの導入失敗しないための方法についてご紹介しました。
利用期間に応じて料金が支払われるサブスクリプションビジネスでは、徹底的に顧客の立場となってマーケティング・セールス・カスタマーサクセスの活動を行うことが大切です。しかし、顧客データなくして、そのような取り組みを行うことは困難です。
こうしたことを踏まえ、米国では、顧客データを最大活用するための先進テクノロジーが普及しています。
本資料を読めば、このテクノロジーに関連して、以下の2点をクリアできる ように、必要な情報を厳選しています。
①多くの企業が直面しているCRMおよびそのデータ活 用の実態について知る
②上記課題を解決する最先端テクノロジーの概要と効 用について理解する
ぜひご活用ください。
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