チャーンレートがサブスクリプションビジネスに与えるインパクト

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売上が積み重なっていくサブスクリプションビジネスにおいては、チャーンレートの増減が大きくビジネスに影響を与えます。本記事では、そのチャーンレートの変化が与える影響を可視化して、どのくらいビジネスにとってインパクトがあるのか解説していきます。

チャーンレートとは?

チャーンレートとはサービスにおける解約率を表す指標です。一般的にチャーンレートは、収益ベースで計算するレベニューチャーンレートとユーザー数で計算するカスタマーチャーンレートの2種類に分類されます。

カスタマーチャーンレートは

カスタマーチャーンレート=月間の合計解約ユーザー数  ÷ 月初のユーザー数

で求められ、一定期間に解約したユーザーや、有料会員から無料会員にダウングレードしたユーザーの割合を示しています。

レベニューチャーンレートは

レベニューチャーンレート = (サービス単価×一定期間で解約したユーザー数/一定期間の総収益)

で計算されます。複数の価格帯でサービスを提供している企業では、カスタマーチャーンレートとそれが収益に与える影響が異なってくるのでレベニューチャーンレートを用います。

チャーンレートはなぜ重要か

サブスクリプションビジネスにおいてチャーンレートが重要であるといことはもはや周知の事実です。しかし、中には顧客のチャーンレートが高いなら、新規顧客をその分多く獲得すればいいと考える方もいるかもしれません。では、いったいなぜチャーンレートが重要なのでしょうか?

一つの目の理由は新規顧客の獲得には平均して、既存顧客の維持の5~6倍のコストがかかるということです。新規顧客は獲得コストが高いにもかかわらず利益率が低いので、新規顧客の獲得以上に、既存顧客の維持が重要であります。

もう一つの大きな理由がチャーンレートの増減が顧客のLTVに甚大の影響を与え、その結果事業成長に大きな差が出るということです。

では、実際にどのくらいのビジネスに影響を及ぼすのでしょうか?

チャーンレートがLTVに与えるインパクト

サブスクリプションビジネスでは一回限りの購買ではなく関係が連続して続きます。そのため1人の顧客がもたらす価値を示すLTV(Life Time Value)と言われる指標が用いられます。

LTVは

LTV=顧客一人当たりの平均MRR/チャーンレート

の公式から求められます。

顧客一人あたりの平均MRRが10万円の場合、このLTVとチャーンレートの関係をグラフで表すと以下のようになります。縦軸がLTVで横軸が0%から20%までの月次チャーンレートを示しています。

グラフからもわかるように、チャーンレートの増加に伴ってLTVは急激に低下します。LTVはチャーンレートと反比例の関係にあり、チャーンレートが2%から1%に下がるだけで、その企業のLTVは2倍になるのです。

LTVを改善するためには、顧客ライフサイクルをできる限り長く保つ必要があります。顧客ライフサイクルをこちらの記事で詳しく解説しています。

チャーンレートが成長限界を決める

次に、チャーンレートと事業の成長性についてみてみます。

サブスクリプション企業で毎月200万のMRRを積み上げていくと仮定します。この企業におけるMRRとチャーンレートの関係をグラフで表すと以下のようになります。縦軸がMRRで横軸が経過年月を示しています。曲線は上から月次チャーンレート5%,10%,15%,20%,25%の順になっています。

 

グラフからわかるように、月次チャーンレートが15%以上の企業では18ヶ月目以降では成長が頭打ちになってしまっています。

36ヶ月(3年)以降も成長を続けていけるのは月次チャーンレートが5%の企業ということもわかります。

チャーンレートとは解約の割合を示しています。したがって、同率のチャーンレートであっても、顧客数が増えていけば増えるほどその負の影響が大きくなります。のチャーンによる収益の減少と新規獲得のMRRが一致した時点で企業の成長が止まってしまいます。

実際には月次獲得MRRが一定という企業は少ないですが、MRRの成長率を上昇させ続けるのは難しいので、多少の誤差はあるものの今回のグラフと同じような曲線を描くと想定されます。

ネガティブチャーンで成長を加速させる。

チャーンによるMRRの減少より、既存の顧客のMRRの上昇が上まった場合、レベニューチャーンレートはマイナスになります。

このことをネガティブチャーンと呼びます。

チャーンが収益にとって大きな負の影響を与えるのと同じく、ネガティブチャーンはサブスクリプションビジネスの収益向上に大きく起因します。

前項と同じく、毎月200万のMRRをつみ積み上げていくサブスクリプションビジネスを仮定し、月次レベニューチャーンレートが10%,5%,-2.5%(ネガティブチャーン)のケースでグラフを作成します。

グラフからもその差は一目瞭然です。

チャーンレートが5%から-2.5%に変化すると、MRRの積み上げは24ヶ月目で2倍に、そして、36ヶ月目では3倍以上の差が開きます。

ProfitWellによると、一般的なSaaS企業の月次チャーンレートの中央値は3%〜9%とされていますが、そのベンチマークに満足せず、飛躍的な事業成長のためにネガティブチャーンの達成を目標としましょう。

チャーンレートの他にも、サブスクリプションビジネスの成功のために経営者が見るべき指標はある程度決まっています。弊社では、そういった重要指標をこちらの資料でまとめて解説しておりますので、ぜひご活用ください。

サブスクリプションビジネス経営者が見るべきKPI10選

まとめ

これまでのグラフが示したように、チャーンレートの増減はサブスクリプションビジネスにとって大きな影響を与えます。ビジネスの成長に課題を抱えている企業では、営業担当者を増やしたり、マーケティング予算を投下するのではなく、まずチャーンレートの改善に取り組みましょう。

また、チャーンレート以外にもサブスクリプションビジネスの売上を伸ばすために分析すべき指標は多数存在します。

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