営業DX推進に必要なプロセスとは?営業戦略の取り組みを解説

DXが注目を集めています。

マーケティング及びコンサルティング会社の株式会社富士キメラ総研が2020年10月23日に発表した「2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」によると、DXの国内市場は2019年の7,912億円に対し、2030年は3兆425億円と、3.8倍に成長すると予測しています。

企業の投資の拡大が予想されるDXについて、この記事では、DXの内容、営業組織のDXの取り組みプロセスを解説します。

そもそも DX とは?

DX とは「デジタルトランスフォーメーション」の略称です。2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が DX の概念を提唱したのが始まりといわれています。

DXの定義は、2018年12月に経済産業省が発表したレポート「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン( DX 推進ガイドライン)」に以下のように書かれています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

(経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン( DX 推進ガイドライン)」より)

DX 推進の具体例として、Amazon を紹介します。ご存知の通り、Amazon は世界最大級の EC サイトです。Amazon の商品サイト特徴として、ユーザーにおすすめの関連商品を合わせて紹介している点です。これは「レコメンド機能」と呼ばれ、ユーザーの過去の購買履歴や類似ユーザの購買情報をAIで解析し、おすすめの商品を紹介しています。また、Amazon の本業はEC事業ですが、Amazon の主力事業の1つとなっているのが「クラウドサービス事業」です。AWS というクラウドサービスは、日本政府が「政府共通プラットフォーム」に採用されるまでに成長しています。このように、Amazon は最新技術を活用しながらビジネスモデルを変革してきました。

そのような世界の DX の進展に対して、経済産業省は危機感を表しています。経済産業省は2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を立ち上げました。そして、同研究会は同年9月に「 DX レポート~ IT システム『2025年の崖』の克服と DX の本格的な展開~」というレポートを発表しました。このレポートでは、「2025年までに老朽化したシステムを刷新し、DX を推進しないと、年間最大12兆円の損失が発生する」と警告しています。これは「2025年の崖」と呼ばれ、企業や政府に大きな衝撃を与えました。

このように DX は「待った無しの経営課題」となっています。

営業 DX 推進の取組み:戦略プロセス

営業組織の DX推進に は、下記の図のように、戦略プロセス、業務プロセス、それを支える人材プロセス全ての変革が必要です。

(図1:営業戦略 DX の推進プロセス)

その中で、戦略プロセスは、「経営管理」と「営業戦略」の2つに大別されます。

最初に「経営管理」プロセスについて説明します。

経営管理でまず必要となるのが「デジタルプラットフォームの構築」です。具体的には「 CRM/SFA を活用した営業業務の見える化」です。CRM とは、「顧客情報管理システム」の略称であり、SFA は「営業支援システム」の略称です。

営業情報の共有というと、日報や Excel シートを活用し、売上が計上されると別システムに入力するのが一般的です。ただ、売上状況を報告することはできたとしても、商談状況や売上予測を分析し、出力するには手作業で行う必要があるため、相当の手間と時間を要します。このため、経営判断に必要なデータを即時に出力することが困難でした。しかし、CRM/SFA を活用することで商談状況や受注予測など、経営判断に役立つ情報を即時に確認することができます。このため、データを起点とした経営判断が可能となります。

次に「営業戦略」プロセスについて説明します。

営業戦略を策定する上で必要となるのが「戦略的セグメンテーション」です。顧客ニーズが多様化した現代において、不特定多数に向けた商品やサービスは、もはや見向きもされません。このため、マーケットを俯瞰しながら「どこを捨てるか?」を明確にすることが大切です。男女、年代、業種、職種、役職など、多角的視点でターゲットを絞り、マーケティングや営業活動を行います。この時、役に立つのが CRM/SFA システムで蓄積したデータです。CRM/SFA ではレポート機能やダッシュボード機能を活用することで、様々な角度でデータを見える化することができます。

そして、これらのデータを活用しながら、「カバレッジ最適化」と「チャネルの最適化」を進めます。「カバレッジ最適化」とは、各セグメントでの目標となる割合を最適化することです。「チャネル最適化」とは、費用対効果を測定しながら、販売チャネルの新設・改廃を決めることです。そして、選択したカバレッジやチャネルに対して、データの分析を進めながら販売期間(リードタイム)や行動量を考慮しながらリソース(人員・資金等)の投入を決めていきます。

このように、「経営管理」プロセス、「営業戦略」プロセスの整備を行いながら、営業組織のDXを推進していきます。

営業 DX の取り組み

営業DXの取り組みを進める上で、カギとなるのが「戦略的セグメンテーション」です。なぜなら、セグメンテーションは「選択と集中」につながり、成長戦略の核となるからです。

セグメンテーションを行うためには、最小のリソースで最大の成果を得られるように「軸」を設定します。軸を設定することでリソースを投下する優先順位がつけやすくなり、結果的にリソースの投下先が集中します。また、戦略的セグメンテーションを徹底することで、生産性が向上し、成果が出やすくなります。このため、組織も活性化します。CRM/SFA を活用することで、営業活動の効率化が更に進みます。

(図2:戦略的セグメンテーション例)

とはいえ、セグメンテーションごとのポテンシャルを考慮しないと思わぬ機会損失を生むことになります。セグメント毎の規模や成長率を考慮することで、どのセグメントに集中してリソースを投入するべきかが明確になります。一方、セグメントの規模や成長率を考慮せずに各セグメントに満遍なく分散して投入すると、成長が期待されるセグメントでの売上を確保できない可能性があり、結果的に機会損失につながります。このため、以下のポイントでカバレッジを定める必要があります。

  • セグメントの規模
  • セグメントのLTV
  • セグメントの獲得コスト
  • セグメントの成長率

(図3:カバレッジのポイント)

また、販売チャネルについても考慮が必要です。これまでの販売チャネルは、フィールドセールスによる直接販売とパートナーによる代理店販売が中心でした。しかし、現在は検索エンジンの発達で顧客がサービスの情報をあらかじめ取得できるなど、顧客の行動に変化が生まれています。このため、販売チャネルも顧客の行動の変化に対応する必要があります。具体的には、「オンライン販売のチャネルを設ける」、「インサイドセールスにより、顧客に情報提供を行う」、「導入支援や運用代行など、パートナの役割を見直す」などです。

(図4:販売チャネルの最適化)

このように、「戦略的セグメンテーション」と「チャネルの最適化」を考慮しながら営業DXを進めていきます。

まとめ

デジタル技術が発達した現代において、DXへの取り組みは待ったなしの経営課題となっています。これは営業組織においても例外ではありません。

営業組織のDXの取り組みにおいて、ポイントになるのが「戦略的セグメンテーション」です。また、戦略的セグメンテーションを進めるためには、データプラットフォームの構築とデータを起点とした経営管理が不可欠です。

営業組織のDXの取り組みは、今後の営業組織の発展のカギになります。是非、DXへの取り組みを進めていきましょう。